全国から岩木山へ

ETC1,000円効果で、岩木山に信じられない光景が始まっている。

シルバーウイークと聞きなれない9月の連休を呼ぶ名称。
この時季は、嶽キミのピークに当るのと同時にりんごや梨など、爆発したように果物たちが出回る。
蜂が花を追うように毎年多くの観光客がそれを目当てに山に来るのだが、今年は今までとは雰囲気が違う。
車の交通量が増加しただけでなく、半分以上が県外ナンバーなのだ。帯広、札幌、神戸、足立、練馬、横浜、千葉etc.。近県の秋田や岩手のナンバーは、影が薄く感じる状態だ。

かつて広告代理店勤めの時代、コマーシャル撮影の仕事で南米はエクアドルに行ったことがある。この国で一番驚かせられたのは、車での走行距離の長さだ。300kmや400kmは当たり前で、街から街までの間には何も無く、ただ車を走らせるだけだ。馴れとはそんなものかと、ガイドをする人達は当然のように真顔だ。途中どこへも立ち寄らず(ドライブインなんかあるわけない)、食い物から飲み物、仮眠用の枕まで支度して出かける。もちろん、予備のガソリンも忘れていない。空を見ながらドライバーは気象予想士にもなり、観光案内(?)のつもりか史跡の説明、撮影隊のための食事まで作ってくれる。

目的は、あくまでも撮影なのだが、地図を見て移動の距離の長さにうんざりしていたら、ガイドの一人が気を使ってくれたのか「時間軸で考えると、どこにいても自分の気持ちが同じなら疲れないよね」と言ってくれた言葉を今も忘れていない。車に乗っている時間も、止まっている時も同じように時間は進む。狭い国に住む、日本人的感覚だったことを恥じた。

それからは、早く着きたいという気持ちはなくなり、異国の景色を楽しめるようになった。 盆暮れの帰省ラッシュは何か辛いものがあるが、このETC1,000円で高速道路を使って『タイムトラベル』を楽しむ人達の行動は、独特のものがある。宿泊の予約もせずに、行ける所まで行く。最悪でも車に寝ればよいというような、無計画・出たとこ勝負。ある面、日本人もやっと余暇を楽しめるようになったのかと感心する面と、観光を業としている人達にとっては金を落とさないのだから肩透かしになる。

団塊の世代が、大量に定年を迎える昨年から今年、それに合わせて高級カジュアルウエアーを発表したアパレルメーカーは、今年に入ってから撤退する会社が多くなった。極めるときは極めるが、車で移動する旅はユニクロでよいのだ。旅行代理店も、たっぷり時間を掛けたコース、金額も内容もゴージャスなツアーを出したが定員を割っているという。完全に見込み違いなのだ。時間を掛けて遠くから来ているが、車の中で寝泊りをしたり、キャンプをしたりというように切り詰めるところは切り詰めて、逆にその町で評価の高い飲食店があって、すこぶる美味しいといったら着飾って出かけ、お金もたくさん使う。

団塊の世代は、健康には気をつける人が多いと聞く。岩木山にもトレッキングに来る人が年々多くなっている。普段は地味だが、トレッキングは身体に対する投資だからといって、シューズに3万、ウエアーに4〜5万は出す人が多い。

生きていく中の物事に対する価値観、その中の一つである「余暇」。旅に関する感覚やスポーツ・いろいろな趣味に関して、人々の考え方は確実に変化しているのだ。観光地である岩木山。そこでお客を迎えるには、年齢だけで相手を判断するような安易な接客態度を改め、相手がどのような「旅」を望んでいるのかを研究をしなければならないだろう。

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