岩木山を愛する「露天商人」

ちょうど、一年前の事だ。

岩木山神社、枡形で弘前露店商組合・組合長齊藤氏と副組合長の山崎氏に会った。鳥居を背にしたこの二人は、どう観ても「普通の人」には見えない。齊藤氏は丸刈りで薄い色のサングラスにTシャツ姿。山崎氏は笑みを浮かべてはいるが目が笑っていない。

鳥居の前にいつも店を出しているアイスクリーム屋のおばちゃんに「おっかない二人だね」というと、あんたも負けていないよと言われた。 この面会はお山参詣の打合せをする為だ。特にこの年は花嵐桜組の奉納演舞があるので、枡形の演舞スペースが問題だった。もちろん、山崎氏とはねぷた絵師の 八嶋龍仙氏との繋がりもあり以前から知り合ってはいたが、いわゆる「頼みごと」は始めてであった。

「花嵐、何人出るの?」と突然切り出した。目が優しくなっている。「50人位かな?まだキャサリンから最終回答をもらっていないんです」「あっそ、 小野さん忙しいものね」そうだ山崎氏とは札幌大会でも会ったし、お山参詣を題材にした新曲での発表会にも来ていたんだから、小野さんとは親しいのかもしれ ない。

突然思いついたように、山崎氏が動き始めた。その辺にあった棒を持つなり、こっちが前だから、真ん中がこの辺で、横幅はこの位あればいいだろう。あいつの店は、もう少し後ろにして、音響関係はその側か...とぶつぶつ言いながら線を引く。

なんと、枡形にステージを描き上げてしまったのだ。「小山さん、これで良いべ!」「はい!」打ち合わせもなく、今日の目的は10分で終わった。

三人で参道を登り始めた。山崎氏は、店の人や知人に気さくな挨拶。齊藤組合長はずっと寡黙だ。第二鳥居の右側にある御神体の五本杉の前まで来た時に 「この御神体もちゃんとさねば〜まいね〜な」山崎氏がつぶやいた。そばに落ちていた吸殻を自分のタバコの箱に入れた。(エコだ)

山崎氏には岩木地区活性化の相談話しをしている。彼も神社から枡形を預かっている責任から、参道周辺の落ち込んだ雰囲気には頭を悩めていた。湯宿の 士気の低下、周辺にあった飲み屋が閉店し、みやげ物を売っている店も少なくなった。再生するには、街の雰囲気作りから始めなければならないだろう。門前街 としての「魅力」を創り上げることで、誘客が可能になる。

力のある食べ物、整備された観光資源、迎え入れる街の人々の構えが必要だ。岩木山神社に参拝客が増える事で、門前街が閏という構図を取り戻そうとい う点では、山崎氏とは考え方が同じだ。だが、いろいろと企画を立てても実行に移すにはタイミングが必要だ。それに、残念だが周囲の人間は、地域活性化など には見向きもしない。

山崎氏は神社から枡形を任されていることの責任、古くから門前街の人たちとの付き合いで生まれた情からか、現状に悩んでいた。彼はよく「バランスな んだ」という。神社の周りに宿があり、飲食屋があり、土産物がある。祭りになれば露店が出るが、同じ種の店を出して問題が起きないように配慮している。

露店商は、いわゆる「堅気の商売」だ。しかし、世間の人達の目は、暴力団のそれと見分けがつかない。だからこそ「始末」を重んじている。祭りが終わった後の掃除やゴミの処理は徹底している。周辺に対する「礼」は、そばで見ていても気持ちがいい。

露店商、齊藤氏は「亀屋のたこやき」。山崎氏は「バナナチョコレート」。子供達の人気商品だ。店の中にいる山崎氏は顔が違う。子供たちがすきなのだ。やさしい顔になっている。しかし、祭りの前に各店の見回りをする際の彼の目は鋭く、厳しい。「政」を仕切っている責任者の顔だ。現在、山崎氏と枡形に朝市を計画しているが、そこにも老齢化した農家への山崎氏の配慮がある。そんな優しい彼は、筆者の三本の指に入る「敬愛」すべき存在だ。

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